つくばの豊かな「農」を知る
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2025.07.22
つくばの豊かな「農」を知る
茨城県つくばエクスプレス(以下、TX)沿線エリアは、新しい街、学術都市というイメージがありますが、駅周辺の中心地域から少し離れると豊かな自然が広がり、古くから農業も行われてきました。近年は30~40代の新規就農する移住者も増えています。
今回は、茨城県TX沿線で「農作物を作る人」「食材をおいしく料理する人」「特産品を販売する人」を取り上げ、地域に広がる食の豊かさに注目します。

つくばを代表する農産物・ブルーベリーの観光農園で、摘み取り&食べ比べを体験

全国有数のブルーベリー生産量を誇る茨城県。なかでもつくば市は日本三大産地のひとつに数えられています。ブルーベリーの収穫期は6月~8月。摘み取りや食べ比べができる観光農園も充実しています。

2023年に開園した、つくば市上郷の「アオニサイファーム ブルーベリー観光農園」。代表はデザイナーとしても活動する京都府出身の青木真矢さんです。つくば市出身の元Jリーガー・近藤直也さんと市内の農家を訪ね、地域と農業をつなぐフリーマガジン『ワニナルペーパー』を立ち上げるなど、土地に根差した活動にも積極的。2024年11月からはつくば市議会議員も務めています。そんな青木さんと農業の出会いは2015年のことでした。


「デザイナーとして、農家として自分にしかできないことをやっていきたい」と話す青木さん

「妻の祖父がつくばで農業を営んでいて、芝生を育てていました。その祖父に農地の活用法を相談されましたが、農業未経験ですし、どうしようかと思っていたんです。そんな頃に、京都の友人からブルーベリー観光農園を立ち上げるから手伝ってほしいと連絡がきまして。

つくばはブルーベリーの名産地ですし、未来が開けるかもしれない。大きなチャンスと直感して、家族で京都へ引っ越し、約4年、農園の広報の仕事をしながらブルーベリー栽培を学びました」

そして2020年、京都から戻った青木さんは祖父から農地を受け継ぎ、農業を始めます。京都での経験を活かしながら、農業の大ベテランである祖父の協力を得て、2023年にブルーベリー農園を開園。完熟期の異なる23品種、約900本のブルーベリーを栽培しています。

「土耕栽培ではなく、約900本を1本ずつポットで育てています。僕が付けた名称ですが『独立適応栽培』という方法です。地下水の成分を分析し、気候やそれぞれの生育状況に合わせて肥料を配合。北米生まれのブルーベリーをなるべく原産地に近い環境で育て、ブルーベリーが本来のおいしさを発揮できるように取り組んでいます」

そうして丁寧に育てられたブルーベリーは、500円硬貨や100円硬貨くらいの大きさに育つものも。完熟した摘みたては、みずみずしくジューシーで、すっきりとした甘さ。驚くほど酸味がありません。品種で異なる味わいの食べ比べも楽しく、食べ始めると止まらなくなります。


いろいろな品種を食べ比べして、自分好みのブルーベリーを見つける楽しみも

農園にはブルーベリーのオリジナルメニューをそろえたカフェを併設。オープンから数年で、県内外から多くの人が訪れる人気スポットになりました。

「嬉しいのが、茨城県TX沿線エリアの中心地域にお住まいの方もいらっしゃってくださること。農園のある上郷地域は、つくばの“周辺市街地”と呼ばれる旧市街地のひとつ。昔は映画館があるほど栄えていたそうですが、現在は農業がさかんで緑も豊か。とてものどかな場所です。『つくばにこんなところがあったんだ!』と驚かれる方もいて、当園に遊びに来たことをきっかけに、中心地域から引っ越してきた方もいるんですよ。

つくば駅から車で15分ほどの距離に、こういった自然豊かで農業のさかんな地域があることは茨城県TX沿線の大きな魅力。つくばのブルーベリーのこと、農業のこと、もっと多くの方たちに知っていただけたらと思っています」


カフェではブルーベリースムージー700円、ブルーベリーピザ1,400円のほか、近所の農家の野菜を使ったサラダピザ1,500円も

つくばの旬の野菜をふんだんに取り入れた、この地域だけのイタリアン

2016年につくば市松野木に開店し、2020年に現在の手代木へ移転した「コルヌコピア」。都内のイタリア料理店で経験を積んだシェフ舟幡崇さんが、妻の洋子さんとともに移住して開いたお店です。


コンセプトは「誰にでも優しいお店」。天井が高く、広々とした店内は段差がなく、車椅子やベビーカーでも気兼ねなく入れます。ペット連れもOK

舟幡夫妻が「コルヌコピア」を開店した当初から大切にしているのが、自家製へのこだわり。毎朝、数種類のパスタを製麺し、数種類の自家製パンを焼きあげる。自家焙煎コーヒーやドリンクに使うシロップなど、あらゆるものを自分たちで作っています。

そして、地元の食材をふんだんに取り入れることも重視。その主役といえるのが、つくばの旬の野菜たちです。

「松野木に開店した当初から、市内の直売所で野菜を仕入れてきました。通ううちに『今、○○さんの畑でビーツ育ててるよ』などと情報をくださるようになったり、直売所を通して農家のおばあちゃんに私たちが希望する野菜を育ててもらえるようになったり。農家さんから『◎◎できたよー』と直接電話がかかってきて届けてくれることも。新規就農の若手の農家さんも多いので、野菜のバリエーションがどんどん広がっています。しかもどの野菜もその日の朝に獲れたものばかり。旬だからこそのうまみがぎゅっと詰まっています」と、店舗でマネージャーを務める洋子さん。

そんな「コルヌコピア」を象徴するのが、ランチとディナーコースの最初に提供されるミネストローネ。その日に仕入れた野菜がゴロゴロとたくさん入っていて、夫妻の「おいしい旬の野菜をたくさん味わってほしい」という思いを感じます。


旬の野菜がたっぷりと入ったミネストローネ

「いきなり食事を始めると胃がびっくりしてしまうので、まずはスープで『これから食事が始まりますよ』と体にお知らせするような。野菜がたくさん入ったお味噌汁のような感覚ですかね」。旬の野菜に豆やもち麦を加えて、シェフが調合したスパイスとチーズで味わいに深みをプラス。野菜のうまみや甘みが、おなかにじんわりと染みわたります。

ランチやディナーのメイン料理となるパスタ、リゾットにも旬の野菜をふんだんに使用。「麺やお米より野菜が多い!」と驚くお客さんがいるほどで、野菜の風味や食感を活かした味わいに心が和まされます。


ランチのAコース1,980円。メインは3種のパスタ、カレー、サラダボウル、肉料理からセレクト。ミネストローネのほか、フォカッチャ、ドリンクがセットに

ディナーコース4,290円のメイン料理のひとつ、彩り野菜とバルミジャーチーズのリゾット(単品2,090円)。この日の食材・ビーツのピンク色で、色彩の美しいリゾットに

「つくば市の農研機構が開発した、大粒で粘りが少ないリゾットに適した『和みリゾット』というお米を、筑波山のふもとで『社会福祉法人 筑峰学園』の方たちに作ってもらっています。イタリアンにはトスカーナ料理など地方ごとにそれぞれ特色がありますよね。コルヌコピアの料理もつくばだからこそ生み出せるような、この地域特有の料理になっていけたらと思っています」


シェフの舟幡崇さんと、店舗マネージャーの洋子さん

地場のおいしい恵みが勢ぞろいした、つくばの農作物直売所へ

茨城県TX沿線には、地場の農産物を扱う直売所が点在しています。つくばイオンモールの敷地内にある「えるふ農国」はその代表格。1990年につくば市柳橋で農産物直売所「みずほの村市場」を創立した長谷川久夫さんが営んでいます。

店内には、長谷川さんが重視する「どういう土地でどういう農産物を、誰がどのようにして作るのか」という「適地・適作」「適材・適所」の考えに賛同した約30名の生産者による農作物がずらり。旬の野菜や果物、米のほか、卵、加工品、精肉など多彩な品々がそろいます。

生産者自身が価格を設定していることも大きな特徴。一般的なスーパーより高いものもありますが、その分、品質とおいしさを徹底追及。試食できる品も多いため、自分がおいしいと思ったものを購入することができます。

取材・文:中村 美枝 撮影:佐野 学

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