それにしてもあの記念コインは、どこへ行ったのだろうか――。39年前、日本に科学ブームの熱狂を巻き起こした、つくば万博。「人間・居住・環境と科学技術」というテーマのもと、世界48カ国と37もの国際機関が参加し、つくばの空に自由曲線を描く巨大パビリオンが来場者をワクワクさせた。
来場者は約2033万人。リピーターを度外視し、単純計算すると、日本人の6人に1人が来場したことに! 偏光メガネで見ると映像が目の前に浮き上がって見えた「住友館」や、ドームスクリーンに立体映像を投影した「富士通パビリオン」など、人気のパビリオンには長蛇の列ができた。
当時、筆者は名古屋で鼻水たらしていた幼児。子ども向け雑誌などでつくば万博が特集され、「パビリオン」という言葉が初めて頭に刷り込まれた。そのせいか、今も「パビリオン」という言葉を聞くとワクワクする。つくば万博を記念し発行された500円硬貨を大切に保管していた子どもは、自分だけでなく全国にいたと思う。
あの頃の子どもに、なんだか分からない「科学と宇宙」をビジュアルで見せてくれたのが、つくば万博。バブル前夜、明るい未来をギュッと詰め込んでいたのがつくば万博だった。