カナダ・バンクーバーから茨城県坂東市へ移住。
食べもの、農業、繋がる人を通して、少しでも世界をより良くするため、ブロッコリースプラウトなどのマイクログリーンと呼ばれる若芽野菜を栽培するマーケットガーデン「microfarmlife」を夫婦で営みながら、ファーマーズマーケット等のイベントに多数出店。
人、コミュニティ、地球を大事にしているカナダのクラフトロースター「Bean Around The World Coffees」とパートナーシップを結び、オーガニックコーヒーの提供・販売も行う。
「Village Market Tsukuba」主催メンバー紹介
夫のGeorgeさんとともにカナダ・バンクーバーから茨城県坂東市へ移住。
Georgeさん、Yukiさんとともに「Village Market Tsukuba」の運営に携わる。
アメリカから2020年に茨城県つくば市へ移住。
アメリカ在住時、Yukiさんの飼うグレータースイスマウンテンドッグという日本では珍しい犬種をGeorgeさんご夫婦も同じく飼っていることを偶然instagramで知り、DMでコンタクトを取ったことから交流がスタート。
Georgeさん、Emikaさんとともに「Village Market Tsukuba」の運営を行う。
「Village Market Tsukuba」主催、Emikaさん・Yukiさん・Georgeさん。(左から)
毎週日曜開催、「Village Market Tsukuba」とは?
「Village Market Tsukuba」は、つくばエクスプレス「つくば駅」または「研究学園駅」の駅前周辺の公園を利用して、毎週日曜日に開催されるファーマーズマーケット。
公園の規模や天候によって増減はありますが、毎週およそ30〜70店ほどのブースやキッチンカーが軒を連ねます。
「Village Market Tsukuba」を始めたきっかけ
Yukiさんと僕は、考え方がほぼ同じで、似たような育ち方や経験をしてきていて。
自分たちが海外で見てきたファーマーズマーケットは、
・コミュニティをサポートすること
・Give back(恩返し)すること
・リサイクルプログラムをできるだけ実施すること
が当たり前だった。
だからYukiさんとマーケットをやろう!って話が出たときに、作りたいコミュニティのイメージも最初から明確だったよね。
私は二人と違って日本で育ってカナダに住んで、ファーマーズマーケットでの会話がきっかけで新しい友人ができたり、ご近所さんの子供の面倒を見るとか助け合いが生まれるのを見たり経験したりして、マーケットという場から生まれる人とのつながりに社会問題を解決できる可能性を感じていました。
自分もマーケットをやるなら、当たり前のようにGive backしたいし、せっかくやるなら社会問題を解決できる場にしたくて。
助けが必要な人が声を上げれば、誰かが絶対手を差し伸べてくれるような場所やコミュニティがあればいいなってすごく思っていました。
コロナによるパンデミックを経験しながら、余計にそういう場が必要だと思った。
日本で貧困に苦しむ家庭の子供がこれからどうなるのか、家から出られなかったり、マスク生活によるストレスとか様々な社会的な問題が生まれてくるだろうと3人で心配していた。
2019年の終わりからファーマーズマーケットに出店し始めて 2-3ヶ月でコロナ禍が始まって、出店を予定していたマーケットが相次いで中止になっていった。
マーケットで知り合った有機農家さんたちからは、「作っても売れる場所がなかったり、思っている金額よりも安い価格でしか売れないから、掛け持ちで別の仕事をしたり、廃業する農家さんが多くいる」という大変な状況を聞いて、何かしらのサポートをしたいという想いがずっとあった。
ファーマーズマーケットをやろう!と思い立ったのは2021年8月の大雨の日だったんだけど、Yukiさんとふたりで話をしていて、どうしてつくばにはファーマーズマーケットがないんだろう、なら自分たちでやっちゃおうか!と半分冗談のつもりで言っているうちに本気になっていって。
そうそう、それでやり方はわからないけどやるなら研究学園駅前公園を使ってみたいなと思って、その日家に帰ってすぐにつくば市役所に問い合わせたんです。
つないでもらった公園施設課の担当の方がすごく協力的な方で、運営の仕方などを熱心に教えてくれて。
翌日3人で企画書を準備して会いに行ったら、「やりたいことはわかったのでやってみましょう!」と、その場で公園が借りられる日程をチェックしてそのまま抑えてくださって。
あっという間に事が運んで、そのあとは、場所以外は何も決まっていない状態から2ヶ月で出店者を集めなきゃとバタバタでした。
でも自信ではないけど、多分できるでしょとは思ってたよね。
マーケット出店者のつながりの中でも「出たい!」と言ってくれる仲間もいたし、出店者はある程度集まるんじゃないかと思ってた。
それまでの出会いで絆も深めていたので、声をかけたらすぐOKと言ってくれる方もけっこういらっしゃったりもして。
一方でYukiさんは、まだできたばっかりの「Village Market Tsukuba」のinstagramアカウントから、たくさんの魅力的な生産者の方に出店の声がけをしてくれていて、両方の相乗効果がすごかった。
最終的に初回は50店舗集まってくれて、ほんとにありがたくて、奇跡でしかないと思った。今だにその50店舗は神様です。
初回に参加してくれた店舗はほとんどいまでも参加してくれてるよね。
商品とともに作り手の想いに出会える場所
「Village Market Tsukuba」の最大の魅力は、人と人を新たなつながりがうまれるフレンドリーなコミュニティ。
会場に訪れた際は、産地やおすすめの商品など、気軽にお店の人に声をかけてみましょう。
出店者はみな「Village Market Tsukuba」の想いや取り組みに共感して集まった生産者なので、商品に対するこだわりや背景など魅力的なストーリーに出会うことができますよ。
主催のGeorgeさん、Emikaさんのブースには、いつでも談笑を楽しむお客さんの姿が。
地域の生産者による直売ブースの一部を紹介!
土浦市にお店を構える「ムトウ削節店」さん。創業80年超えの鰹節・鯖節の専門店のブースからは、ふんわりとお出汁のいい香りが!
本場中国の品質のいいものをたくさん手に取りやすい価格で提供したいと商品への想いを語ってくださった「長寿薬膳堂」さん。
これも食べてみて!と次々と手渡される試食をいただきながら、薬膳の様々な使い方について話が弾みます。
日本で最初の限界自治体となった高知県長岡郡大豊町佐賀山の小さな集落で、化学肥料・化学農薬を使わず育った「限界突破ショウガ」と、
そのショウガを利用して作られた商品を販売しているLand i Leben(ランディレーベン)さん。
看板商品のジンジャーシロップは、冷たい炭酸やお酒で割るのに丁度いい甘さでショウガのピリッとした辛さと香りが爽やか!
会場で甘い美味しそうな香りを漂わせていた「BEAN TREK Coffee Roasters」さんの手作りドーナッツ。
ドーナッツは国産の原料を使用。小麦粉の一部や野菜系のドーナッツなどは茨城県産を使用しているそうです。
キッチンカーでのフード販売も充実!
アフリカの家庭料理レストラン「シダモ」のご主人アドさん。
「休憩無しで一日中踊れるよ!」とダンスしながらおすすめの商品を紹介してくれました。
キッチンカーだけでなく、テントでフードやドリンクを販売するお店も!
写真手前は、地産地消を大切にした創作料理のレストラン、HARE GOHAN」さん。
時刻は丁度12時のおひるどき。
HONDA GOHANさんのキッチンカーの前には、揚げたてのポテトを目当てに長い列ができていました。
会場全体から感じられる、楽しそうで和やかな雰囲気はどのようにして生まれているのでしょうか?
一番最初に思ったのは、私達が一番楽しんでいるからじゃないかなと思う。
毎週毎週忙しいけど、めっちゃ幸せ。楽しい。エネルギーをもらえるよね。
「Village Market Tsukuba」はテーマに「Earth Day Every Day」を掲げていて、地球環境や社会貢献について考えている人たちが集まっている。
その共通した思いが人と人をつないで、共感やシナジーを生んでいると思う。
あとは、なるべくコストをプラマイゼロでうまく回せたらいいなと思っていて、出店料もなるべく安くしている。
だから出店者さんは、出店料分は売上をつくらなきゃというプレッシャーもなく、イベントを楽しめる余裕があるとおもうんですよ。
やっぱり出店料が高いマーケットにでるとぴりぴりしてるんですよ。そういう空間を作りたくなくて。
それから私達は、出店者さんを選ぶときも売りたいだけの人は絶対にNGにしてるんで、それも多分大きいと思う。
そういうのってやっぱりお客さんにも伝わると思いますし。
特に自分たちから何かを言ったり促すわけではなかったけれど、コミュニティの中で出店者さん同士でつながって新しいアイディアが自然に生まれていて、お菓子とコーヒーだったり、農家さんとキッチンカーがコラボしていたりして。
そういう新しい繋がり増えていくのがうれしいなって思う。
出店者さん同士、みんなライバルじゃないですよね。
仲間っていう意識。
同じ商品を扱ってても。そこがいちばん大きいかも。
気軽に地球環境や地域社会へ貢献できるスポットにも注目!
地球環境や地域社会のために少しでも多くのアクションを起こしたいという3人の想いからスタートし、「Earth Day Every Day(毎日が地球の日)」をテーマに掲げているこのイベント。
会場のインフォメーションブースでは、イベントに訪れるファミリーや個人が気軽に環境や地域社会へ貢献できるよう、以下の5つの支援活動を実施しています。
茨城に住む貧困世帯の子ども達へ食料支援する「きずなBOX」
缶詰やお米、レトルト食品や乾麺など、家庭で余っている未開封で賞味期限が2ヶ月以上残っている食品を、会場に設置した「きずなBOX」にて回収しています。
「Village Market Tsukuba」のきずなBOXには、毎月30キロ以上の食品が寄付されており、回収した食品はフードバンク茨城を通して、茨城県内の児童養護施設や子ども食堂への食の支援として活用されます。
中にはスーパーの袋に満杯の食品を両手に下げてブースに立ち寄る方や、寄付が毎週のルーティンとなっている方もいるのだそう!
寄付するときの留意点等は、こちらのサイトをチェック!
おもちゃや文具品を子どもたちへ届ける「クリスマストイドライブ」
12月に開催されるマーケットでは、おもちゃや文具品を持ってきてくださいと声がけして、家族に恵まれていない子どもたちにクリスマスプレゼントを届ける活動をしています。
2022年は、児童養護施設1箇所、子ども食堂2箇所の計3施設、100名以上の子どもたちの手にプレゼントが渡りました。
歯ブラシを植木鉢に「歯ブラシリサイクルプロジェクト」
テラサイクルとライオン株式会社が協働で行っている「歯ブラシリサイクルプログラム」に参加しています。
回収された使用済み歯ブラシは、植木鉢などの新たなプラスチック製品へ。
2022年、「Village Market Tsukuba」では2000本以上が集まり、植木鉢に生まれ変わりました。
会場内「ゴミゼロ」へのアクション
マーケット内でのゴミゼロを目指して、参加者に向けてマイバッグやマイ箸、食器などの持参を呼びかけています。
実際に会場では環境に配慮し、ビニール袋の提供を行わないお店も!
無料でマイボトルに給水できる「mymizuスポット」
ペットボトル利用の削減を目標に掲げるmymizuによるmymizu給水パートナーコミュニティに参加。
mymizuアプリ内で検索できる給水スポットに「Village Market Tsukuba」が登録されており、開催時間内であれば持参したマイボトルやマイカップに無料で給水することができます。
ペットボトルを購入する代わりに500mlを給水するだけで、約333gの二酸化炭素を削減できるのだそう!
家庭から持ってきたリサイクルアイテムや食品は、回収箱が並ぶインフォメーションブースへ。
フードバンクやリサイクルプロジェクトといった活動についての想い
フードバンクが一番最初の取り組みだったよね。
マーケットをやるってなったときにすぐフードバンクとトイドライブっていう言葉が出てきて。
フードバンクをやろうと思ったときに、フードバンク茨城のきずなBOX以外の支援先を探すのが大変だったよね。
子ども食堂だって今は3箇所とつながっているけれど、なかなかつながるきっかけを見つけるのが難しかった。
「意外とオープンになってないんだな、こういうものは。」って印象を受けたよね。
あとは、つくばのお客さんたちのフードバンクへの支援に対するレスポンスやリアクションははんぱないよね。
集めた食品をフードバンク茨城っていうところにいつも持っていくんですけど、「Village Market Tsukuba」は持ってきてくれる人数や一人ひとりの量が多いから、私達が一日で集める食品の量が、市役所やスーパーに置かれている他のきずなBOXが1ヶ月ぐらいかけて集める量だったりするみたいで、すごい驚かれるんです、毎回。
12月のクリスマスシーズンのマーケットで呼びかけたトイドライブもすごい集まって、自費で買ってまで用意してくださる方もいて。
うちが青山ファーマーズマーケットに出店していたときの常連のお客さんが、通販で買ったすごい量のプレゼントを郵送してくれたこともあったよね。
私達もお客さんたちの支援の力に毎回感動するんです、ほんとに。
「Village Market Tsukuba」の取り組みに共感してくれる人へ伝えたいこと
海外から来て思うのは、日本の人は見てほしくないところを隠したり、見て見ぬ振りがすごい上手なんですよ。
でも問題に向き合わないと助けたり、力になることができない。
だから、自分たちの取り組みに興味を持ってくれるのであれば、まずは支援が必要な人についてリサーチして、自分にはどんな支援ができるか探してほしい。
今自分たちも、他にどんな人へのサポートをしていきたいか話をしていて、シングルペアレントのためになんかやりたいなとおもっている。
日本にはびっくりするぐらいシングルペアレントがいっぱいいて、働きながら子育てをするお母さんも大変だし、こどもも家で一人でいる時間が多くてつらい、そんな家庭にエネルギーを与えるような活動がしたい。
けれど、実際に困難を抱える人にアクセスする手段もサポートの仕方もまだ見つかっていない。
何かいいアイディアはないかなとずっと考えている。
シングルペアレントへの支援の他にも「Village Market Tsukuba」が協力できる支援プロジェクトがないか常に探しています。
なにかアイディアがあればぜひ紹介して下さい!
次回のマーケット開催情報
生産者にとっても、お客さんにとっても有意義な場であり、さらにみんなが地域社会に貢献できるファーマーズマーケット、「Village Market Tsukuba」は、毎週日曜日につくば駅または研究学園駅前周辺の公園で開催です。
5月は以下の場所で開催を予定しているそうなので、ぜひ足を運んでみてくださいね!
5/7 @中央公園
5/14 @学園の杜公園
5/28 @研究学園駅前公園
人々が繋がり、人と地球にフレンドリーな雰囲気を楽しむファーマーズマーケット
OPEN:
毎週日曜日、10:00〜16:00
PLACE:
つくば駅、研究学園駅前周辺公園にて開催
開催場所・出店情報は、サイトまたはinstagramでご確認ください。
https://villagemarketjp.wixsite.com/tsukuba
https://www.instagram.com/village.market.tsukuba/
過去の「Village Market Tsukuba」取材記事はこちら
- 人にも地球にも優しい「Village Market Tsukuba」で見つけたごちそう時間 | 子どもを育む街! つくばスタイルBlog
- https://new-tsukuba.jp/tsukuba-style.jp/blog/2021/10/26799.html
おみちゃん
つくば市在住の主婦。美味しいもの、素敵なお店探しが好き。
浅野 南 (あさのみなみ)
つくば市移住歴約1年半の新米ライター。
つくばエリアが「知らない街」から「だいすきな街」に塗り替わっていくのを楽しみながら執筆しています。