茨城県土浦市出身の41歳。
職業は、グラフィックデザイナーと菓子製造の兼業。
つくば市から車で15分の距離にある自身の経営する店舗を持っている。
2021年2月に東京からつくば市二の宮の賃貸住宅へ移住。
つくば市並木エリアで中古の一軒家をつい先日購入したばかり。
物件選びの際の基準は、犬を飼っているので周りに散歩ができるような自然を感じられる大きな公園があること。
お話を聞いた人
佐々木さんの妻。埼玉県出身34歳。
職業は Web デザイナー。
コロナによりリモートワーク中心の生活に切り替わったことで移住を決断。
物件選びにあたってのこだわりは、月に数回は都内や地方に行く必要があるため最寄り駅・都心へのアクセス重視で、今後の状況次第で都内に生活の基盤を戻す余地も考えた上で資産価値が下がりにくい物件。
つくばを知るプロ
つくば・土浦を中心に茨城県南・県央で11店舗展開している地域密着型の不動産会社、一誠商事つくば本社に勤務。
都心へのアクセスが良い、つくばエクスプレス(TX)
つくば市は茨城県のほかの市町村と比較して特徴はありますか?
つくば市は1985年の「科学万博つくば’85」をきっかけに開発された新しい市なので、同じ茨城県内でも例えば水戸など、歴史ある古い地域と比べると雰囲気は全然違います。老舗と言われるようなお店などは少ないですが、代わりに公共施設やインフラなどさまざまなものが比較的新しいのが特長です。
理的な話でいうと、つくば駅周辺は坂が少なく平坦で、崖なども無いのでハザードマップでも危険度が少なくて災害にも強いです。小貝川と桜川の周辺だけハザードマップで水色になるくらいで、中心部は基本的に川から離れているため土砂災害も無く、水害リスクの範囲にも入っていません。だいたい海抜22mから23mくらいありますからね。水害リスクが少ないから地盤も緩くなく地震にも強い。これは住む方にとっては大きなメリットだと思います。
おそらくそういった災害に強いというところもつくばが開発された理由なんでしょうね。
更につくばエクスプレス(TX)が2005年に開業し、最短45分で都内へアクセスができるようになったことで、都心にお勤めの方がTX沿線へ引っ越してくるというケースがかなり増えました。
なぜ、つくば?物件を探す人たちのリアルなニーズ
つくば駅周辺にお住まいの方や転入を希望されている人たちについてお伺いしたいです。
住んでいる人の割合は、以前までは都内で働く人と地元で働く人で半々くらいでしたが、ここ2年ぐらいはコロナの影響もあり、都内在住の方がつくば駅周辺の物件を希望されることがかなり増えています。現在は需要に対して提供できる土地・物件が不足する程に人気のエリアとなっています。
私たちも都内からつくば市に移住を決めた一番の理由は、コロナの影響で働き方が変わり、対面のMTGが減って自宅で仕事が完結できるようになったことでした。
とはいえ月に何度かは都内へ出る必要があるので、都内へ電車1本でアクセスできる点でつくばはとても便利に感じています。
都内で4000-6000万のマンションを購入するのに比べたら、同じ金額かそれ以下で、自然豊かなつくばで広い庭付き一戸建てを買う方がいいよね、という理由で分譲住宅や中古住宅を探されている方が多いです。
たとえば都内の一戸建てだったら土地の広さが20坪から30坪ぐらいかと思いますが、つくばだったら60坪前後が平均ですからね。都内と比べたら同じ値段を出しても倍かそれ以上の広さで庭付きに住めますから。
戸建てだけでなく、マンションも盛況でしょうか?
マンションも同様ですね。もともとつくばに住んでいた人からの住み替えニーズも高いので、つくば駅周辺のマンションは依然として人気がありますし。駅直結の建設中のマンションも150平米を超える最上階の部屋は1億5000万円を超えたんですよ。第1回目の申し込みで申し込み者が殺到して抽選になっていて。
マンションの需要もそんなに高いんですね。てっきりつくばに来る人は一軒家に住みたがる人が多いのかと思ってました。
そうなんです。より良いマンションを求めて今住んでいるマンションより良いマンションができたらそっちに移って、さらにまた新しくマンションができたらそっちに移って、と売買と住み替えを繰り返していく人もいます。
それだけ新しいマンションにもニーズがあるということなんです。そしてそういった人が転居した後に転入者がまた入ってくるという流れができています。
賃貸の方も同じ状況ですか?
はい。今年も春の引っ越しシーズンにはアパートの入居率が高すぎて紹介できるアパートが少なくなりましたし、今年はつくば市がアパートの入居率で関東一になるんじゃないかと言われているくらいです。そうすると当然価格もどんどん上がっていきます。
研究学園の方のアパートもここ最近で家賃が1割2割上がっていると思います。6万円の1LDKのアパートの部屋が8万円とか。
東京と同じレベルの家賃ですね。驚きました。
東京から移住してリモートで仕事をしている人が研究学園の駅前の新築ワンルームアパートで10万円の部屋に住んでいたりします。
確かに東京の家賃とあまり変わらないですけど、ひと回り大きい土地と建物に住めるのでそれだったら東京に住むよりつくばの方がいいと感じますよね。
私達も移住の際、東京の家賃と駐車場代を合わせて20万円程の広めの1LDKの物件から、つくばの3LDKの賃貸マンションに住み替えたのですが、半額で都内のマンションの倍の広さに住めるという事実にかなり驚いた記憶があります。
研究機関が多く、教育レベルの高いつくば
他にもつくばの特徴として、研究者・技術者のまちというのが挙げられます。
現在、JAXA、気象庁気象研究所、産業技術総合研究所など日本中の研究機関の7~8割がつくばに所在している関係で、国籍を問わず研究所勤務の研究者・技術者はかなり多いですね。
研究者が多いと、教育のレベルも高そうなイメージがありますね。
小中学校のレベルは全国トップクラスだと思います。また、特定の小中学校への編入を希望して引っ越しを検討される家庭もすごく多いです。
そして、小さい頃から将来の目標を明確にしている子どもも多いみたいですね。
漠然とただ勉強するだけでなくて「この仕事についてみたい」とか。研究職を仕事にしている親は自宅でも当たり前に勉強するので、子どももその背中に憧れて能動的に勉強に取り組むようになるようです。
周りの子とお互いに影響を受けながら自分の子どもの学力や知的好奇心が引き上げられる環境はすごくいいですね。
人とは違った目線や発想を持つ子どもたちが周りにたくさんいるだろうから子どもはもちろんのこと、子どもを通じて親も刺激を受けられそう。
つくばエキスポセンター、サイエンスツアーなど、遊びながら学べる文化施設がたくさん!
つくばには子どもたちが将来を考えるきっかけもいっぱいありそうです。
つくばには知的好奇心を刺激される遊び場がすごくいっぱいありますよね。
JAXAの見学にも行けるし、つくば駅前の「つくばエキスポセンター」では、最新の科学技術や身近な科学に触れられます。
自分がまるごと入ることができる大きなシャボン玉を作れるなど科学のおもしろさを体験できる展示もたくさんあって面白いですよね。他にも「地図と測量の科学館」や縄文・弥生時代の遺跡跡や文化史跡もいくつかあります。
つくばエキスポセンター:駅ロータリーからも見える、大きなロケットが目印。
写真提供 (公財)つくば科学万博記念財団
つくばエキスポセンター:直径25mを超える大迫力のプラネタリウムは世界最大級
写真提供 (公財)つくば科学万博記念財団
つくばエキスポセンター 1階展示フロア:見て、触って、遊びながら科学のふしぎを体験できる常設展示がたくさん
写真提供 (公財)つくば科学万博記念財団
夏休みにはつくば駅からいろんな研究所にバスに乗って見学に行くサイエンスツアーもありますよ。また、国立科学博物館つくば実験植物園の収蔵庫は年に一回オープンラボとして解放されているんですが、そこでホルマリン漬けの標本が見られたり、知的なインプットが多いです。
- 筑波実験植物園
- https://tbg.kahaku.go.jp/
知的な遊び場所以外にもおすすめの場所はありますか?
一番わかり易いところでいうと、つくば駅からバスで30分程度で筑波山へハイキングに行けますね。筑波山の麓には大きいジップラインが目玉のアスレチックができる場所もあります。
自転車好きの方には、つくば霞ヶ浦りんりんロードという霞ヶ浦から筑波山までつながっているサイクリングコースもおすすめです。
他にも文化財になっている古い建物を再利用するなど、ユニークなコンセプトのデザイン性の高いカフェや、個人でやっているギャラリーや雑貨屋さんなどのお店も増えていて、家族の週末のお出かけには困らなそうです。
全長180kmのつくば霞ヶ浦りんりんロード:かつては筑波線の駅だったところを休憩所として再利用している
自家製野菜のカフェ JOURNAL
天久保にある暮らしの道具と食べもののお店「ろばの家」:内観
天久保にある暮らしの道具と食べもののお店「ろばの家」:外観
- ろばの家
- https://68house.stores.jp/
つくばの良さは、それらの遊び場所が他の市をまたぐことなく出かけられるコンパクトさだよね。
他にも街のそこかしこで、流行りのカルチャーを自分なりの解釈でやってみようというポジティブなチャレンジが感じられる気がします。自然や田舎の暮らしの中に、都会的な楽しみも同時に感じられる街というか。
本当にそう思いますね。車でちょっと移動する位の範囲に面白い場所がたくさんあって、ドライブがてらいろんなところに遊びに行けます。街中も公園や街路樹が多くて癒されますし、車を少し走らせたら自然がいっぱい。自然のあるエリアにはこれからキャンプ場などももっと増えていくんじゃないかなとも思います。
並木エリアは並木公園と大型の分譲地が増加中で人気
そんなつくばですが、今回、佐々木さんご夫婦がつくば市の並木エリアの分譲地で物件を選んだ理由はなんだったでしょうか?
僕は大きい公園が大好きで、現在洞峰公園近くの二の宮に住んでいます。
並木エリアにしたのは洞峰公園ほどではないですが並木公園という大きめの公園があったことと、商業施設も近くにあって住みやすそうなイメージがあったからです。
並木は少し前から栄えてきているエリアですけど、この1年2年でまた盛り上がってきていますね。
駅前はもう土地が無くて新たに一戸建ては建てられないので、それでもまだ駅に近い並木エリアなどの周辺には大型の分譲地がたくさんできています。そこにお子さんのいるご家庭なども集まってきていて、ホットスポット的に人気が出ています。
あとは、並木は文教地区で並木ショッピングセンターや郵便局など生活に必要な施設もまとまっているエリアなので、ある程度住んでから売却することもできそうかなという思いもありました。
すごくいい判断だったと思います。
つくばはもともと住んでいた人たちの住み替え需要や、新しく都内から引っ越してくる方々もたくさんいるので、中古戸建でもなかなか値段が下がりにくい状況です。
並木公園
並木ショッピングセンター
BLΛNDEつくば並木店
アクセス至便で住みやすさが人気の松代エリア、梅園東エリア
駅から近くで、並木と同様のエリアはありますか?
少し前までは稲荷前などのエリアが人気だったんですが今は少し落ち着いてきていて、並木に近い梅園、東エリアや研究学園駅にも近い松代エリアなどが人気です。土地も値上がりしています。
つくばエリアマップ
松代エリアはつくば駅にも研究学園駅にも行きやすいですからね。実は私自身も松代エリアに住んでいるんですが住みやすいですよ。住宅と田んぼがあってお店などは少ないですが、車だったらつくば駅にも研究学園駅にも両方行けて便利です。
梅園、東エリアはもともと幹線道路の野田線に商業施設がいくつもあってとても便利ですし、区画整理されていて綺麗で住みやすいと評判です。また、ここは20年前30年前に盛り上がったセレブ住宅でもあります。つくばではこの辺りと二の宮エリアがいわゆる一等地ですね。
松代エリアや梅園、東エリアは自家用車は必須ですか?
梅園、東エリアに住む場合はそうですね。松代エリアなら駅が使えるので車が無くても自転車だけでも暮らせると思います。でも車を1台は持っているご家庭が多いと思いますね。駅からちょっと離れてしまうとご家庭で車1台では足りなくて家族一人1台ないと困りますから。
駅の南側に人気エリアが集中していますが、昔の繁華街だった天久保エリアの方は、中古の戸建て物件が出ることはありますか?
天久保エリアは学生街でもあるので中古の売り戸建てが出ることはかなり少ないですね。筑波大学に近いので学生をターゲットにしたアパートが多いです。家を買いたいファミリーなどはやっぱりつくば駅から南側のエリアを探されることが多いですね。
自然が色濃く残る倉掛と吉瀬、外国の田舎のような春風台
都心部とは逆の刺激を求めてくる人もいますよ。駅から遠くの自然が色濃く残る倉掛とか吉瀬というエリアで薪ストーブを使った暮らしをしている方もいます。自然が多くて畑や田んぼがたくさんあるところです。ただ、こちらも中古物件はやっぱり少ないですが。
春風台というエリアも特徴的ですよね。外国の田舎の家みたいなイメージで、道路から家までのアプローチが長く、大きい庭の真ん中に建つおしゃれなアメリカンハウスが並んでいます。止まっている車も大きいトレーラーだったりして。
春風台も人気が高くて、物件もよく売れています。土地値だけで3,000万円は下らないですが、全ての住宅に芝生(緑地)と畑(農地)と住宅地が一体的に配置される「緑住農一体型住宅地」は海外の家並みを想像させる、ゆとりある暮らしの風景がありますね。
まつりつくばの混雑と週末の渋滞
暮らしの楽しみという点で、つくばには昔ながらのお祭りなどはありますか?
昔ながらのお祭りは無いですね。ただ、年に一回行われる「まつりつくば」では青森のねぶたをやっています。つくばは新しい街で歴史が浅いのでよそから持ってきてやっているんですよね。新しい街ということで言うと、地域内の濃厚な付き合いもあまりないと思います。例外として駅から離れた自然の多い地域ではそうでないこともありますが。
開発された新しい地域と、古くから人が住んでいる地域とで、雰囲気はかなり違いそうですね。
そうですね。開発された地域にはどんどん人が流入して人気になっているので、そのデメリットも無いわけではありません。「まつりつくば」では、ねぶたの見学と出店に出かける人の数が物凄くて、普段は車道も歩道も道幅が広いので通りやすいのですが祭りの時はギュウギュウです。年々見学客の数が増えていて、つくばの駐車場はほぼ満車。少し離れた別の駅側に行っても停められないぐらいです。
車の渋滞は普段の日の週末でもありますよね。市内の中心部を挟むように通るふたつの県道は朝夕の通勤時間はどっちも混んでいるので、外出するときはその時間帯を避けることもあるくらいです。
遊歩道沿いにはたくさんの公園、イーアスつくば、つくばイオン、パン屋さんも
ここまでお話してきましたけど、やっぱりつくばと言うと教育のレベルが高いこと、つくばエクスプレス(TX)で都内までのアクセスが良いということ、そして公園や遊歩道が多いというところなど、魅力は多いですね。
遊歩道を使えば家からほとんど車と出会うことなく安全に広範囲を散歩できますし、公園も広くてペットや子どもを遊ばせるのにも良いし。
ぼくがひとつ心配なのは、住みたい人の需要がつくばはとても高いと思うのでいまある公園が宅地開発のため潰されてしまうのでは?ということなんですが、大丈夫でしょうか?
綺麗に整備されていくことはあると思いますが、宅地開発で公園が無くなることはないと思います。
大きい公園がいくつも連なっているのは本当につくばの魅力ですよね。駅から北にまっすぐ延びている遊歩道沿いに公園がいくつも作られているので、その近隣であればどこに住んでもすぐに公園に行けます。休日に家族で過ごすにも公園はいいですし、ショッピング派の人であればイーアスつくばもつくばイオンもあります。
あと、つくばはこの10年で「パンの街」と言われるようになってきていて、実際にパン屋さんがたくさんオープンしています。
そういえばパン屋の紙袋を持って公園のベンチで腰かけて食べている人を見かけることがあります。
洞峰公園沿いにあるパン屋「モルゲン」。天気の良いお昼時は紙袋を傍らにベンチに腰掛けてピクニックする姿もよく見られます。おすすめは、パンもクリームもふわとろのクリームパン。
人口が増えていることのデメリットもありますが、総合的な意味でつくばは環境が良いですよね。都内から来た人、地元の方、外国人など様々な方がいて、新しい人が入ってくる街なので雰囲気もいいですから。
つくばは、つくばエクスプレス(TX)で都内にも通いやすく仕事はそのままで住まいだけ移すということもできる。また、ショッピングモールや公園も多いので住環境としても心地よく過ごせそうだ。学力レベルも高いので、子どもの教育を考えたときにも申し分ない。
ただ、それだけ魅力的なまちだけに人口の流入が多く、渋滞などの混雑が起きるのはデメリットだが、自転車と組み合わせるなどの工夫である程度の回避はできそうだ。都市的な暮らしと田舎的な暮らしの両方が欲しいと考える家族には、つくばは検討する価値がありそうだ。
磯木淳寛 (いそきあつひろ)
教育事業、地域ブランディング。地域のストーリーを題材にした商品開発にも取り組む。関係人口を育む、インタビューと執筆のワークショップ「LOCAL WRITE」主宰。