一口に「農業体験」といっても、内容は様々です。本格的なものだと、年間で畑を借りて家庭菜園に取り組む「体験型農園(市民農園・貸し農園)」や新規就農希望者向けに開催される「農業インターンシップ」などもあります。
本記事では、子供連れの家族でも気軽に楽しめる、アクティビティとしての農業体験をご紹介します。
一口に「農業体験」といっても、内容は様々です。本格的なものだと、年間で畑を借りて家庭菜園に取り組む「体験型農園(市民農園・貸し農園)」や新規就農希望者向けに開催される「農業インターンシップ」などもあります。
本記事では、子供連れの家族でも気軽に楽しめる、アクティビティとしての農業体験をご紹介します。
田植え体験、田んぼの草取り体験、稲刈り体験
野菜の苗植え、畑の草取り体験
果物狩り体験(ブルーベリー、苺、梨、ぶどう、栗etc.)
野菜収穫体験(大根、人参、玉ねぎ、さつまいも、たけのこ、しいたけetc.)
収穫物を使った調理体験
収穫物を使った加工品作り体験
農業体験の大きな魅力は、「食育」として食を意識するきっかけ作りができることです。
日頃何気なく口にしている食べ物がどのように作られ食卓に届けられているのか、自分の目で見る機会はなかなかないですよね。それを実際に体感することで、自然と食べ物への関心や感謝の気持ちが生まれ、食育に繋がります。また、収穫体験であれば、自分で採った美味しい野菜や果物を実際に味わうこともできます。
農業体験は、普段中々体験することができない農作業への挑戦や、農家さんや他の参加者の方々と交流するなかで、感受性やチャレンジ精神、観察力などを育む効果もあるといわれ、季節によって作業内容や収穫できる作物が変わるので、自然環境への理解も深まります。
子供にとって遊び感覚で体験できるものが多いので、家族の楽しい思い出として残るのも嬉しいところです。
食育や体験学習としての側面がありながら、アクティビティとして家族みんなで楽しめるのが農業体験の醍醐味といえるでしょう。
つくば市柳橋にある「みずほの村市場」さんは、地元産の農作物や加工品などを販売する直売所として知られています。年間通して様々な農業体験や参加型イベントが開催され、県内外から多くの人が訪れる人気スポットです。
みずほの村市場さんの米作り体験では、田植え・草取り・稲刈りの3つの工程が体験できます。
参加は事前申し込み制で、例年シーズンになるとウェブサイトで参加者を募集します。「田植えだけ体験したい!」という方は、費用は変わりませんが1回のみの参加も可能です。
体験する場所は、みずほの村市場から歩いて行ける距離にある田んぼです。プロの農家さんたちに教わりながら田植えから稲刈りまで体験できるなんて貴重な機会ですよね。
収穫された米は後日精米されたものを収穫量と参加日数に応じて受け取ることができます。
今回ライターは、9月の秋分の日に実施された稲刈り体験に参加させていただきました。5月の田植え、7月の草取りに続く今シーズン3回目の米作りイベントです。
会場近くのテントで受付した後、すぐに稲刈りがはじまるのかと思いきや、まずは刈り取った稲を束ねるための縄づくりからスタート。昔ながらの手法で藁から手作りした縄は、この後紹介する「おだがけ」という工程で使うのだそう。
やり方を教えていただきながら挑戦しましたが、これがなかなか難しい…。
1人10本のノルマに、大人も子供も夢中になって取り組んでいました。
縄作りが完了したらいよいよ稲刈りのスタートです!
鋸鎌(のこぎりかま)と呼ばれる道具を使って稲の根元を刈っていきます。子供が行う場合は危ないので必ず大人の方が付き添いましょう。
黄金色の稲穂は少し重みがあり、手に持つとなんだか少し誇らしい気分。1度コツを掴めば女性の力でもザクッザクッと軽快に刈ることができます。
刈った稲を交差するように重ね、先ほど作った縄で根元近くをくくって留めたら1束完成です。
上手に鎌を操る子供たちの姿も。
今回が3回目の参加というベテランのお兄ちゃんは大人顔負けの手つきで稲刈りを進めていました。
幼い子供たちも飽きることなく集中していて、みんな作業を楽しんでいるのが伝わります。
最後に「おだがけ」といって、刈り取った稲を天日干しするための作業をします。
竹などで作られた支柱に刈り取った稲を隙間なくかけていきます。
現代の機械農業では乾燥機を使う手法が一般的らしく、このような天日乾燥を行う農家さんは減っているのだそう。
こちらも現在はあまり使われていないという足踏み脱穀機。
まだ脱穀機を踏むのが難しい子供たちは、もみすり体験を楽しんでいました。
ちなみに子供たちに米作り体験で何が1番楽しかったか尋ねると、「田植え」という回答が多かったです。
子供たちは農業体験以外にも、待ち時間には虫取りをしたり畦道を駆け回ったりと、自然のなかでたくさん遊んでいました。
米作り体験は子供連れのファミリーがほとんどで、田植えから通して参加されているという方も多かったです。参加されていた方にお話を伺ったところ、県内だけでなく、東京や千葉など県外からこの体験を目当てに来たという方もいました。
みずほの村市場には、イベントがない時期でも楽しめる直売所や食事処もあります。
様々な農作物を扱う直売所は朝9:00から、美味しい蕎麦が食べられる「蕎舎(そばや)」は11:00から営業しています。
豊かな土壌で育った季節の野菜や果物、米などが並ぶ直売所。
珍しい品種が見つかるとウワサの園芸センター。マニアの間では有名で、遠方から買いに来る人もいるのだとか。
蕎舎の横で回る巨大水車はみずほの村市場の名物になっています。
趣ある建物は約150年前の農家住宅を移築したものなのだそう。
地元の旬野菜や挽き立てのそば粉を使用した料理は、地元民はもちろん県外からの観光客にも愛される味です。
米作り体験を主催されている、みずほアグリサポートの代表取締役・高橋さんにお話を伺いました。
みずほの村市場ができたのは1990年で、米作り体験は今年で26回目になります。当時は直売所の草分け的存在でした。みずほの村市場で研修をして独立していった農家も何名かいます。
こういったイベントを企画するようになったのは、消費者であるお客さんに農業の現場を知ってもらいたいと考えたからです。米作り体験以外にも、ひまわり迷路など消費者参加型イベントを開催しています。イベントの参加者はやはりファミリーの方が多いですね。
米作り体験は毎年参加してくれる方も多く、年々参加者が増えています。最初は100名くらいでしたが、今では400名くらいいますね。近隣だけでなく東京から来ている方や、3歳くらいの子供も参加しています。
全3回の中では、田植えに参加する方が1番多く、みなさん楽しんで体験していますね。手植えだけでなく、機械を使った体験もできます。
10月28日(土)29日(日)に「みずほの村祭り」という収穫祭を予定しています。「蕎麦愛好会」による蕎麦打ちがあったり、ヤマメの掴み取り体験をして、その場で焼いて食べることもできます。白と赤、2色の蕎麦の花の摘み取り体験などもあるのでぜひご参加ください。
〒305-0842
茨城県つくば市柳橋496
https://mizuhonomuraichiba.com/
【米作り体験】
事前申込制
※2023年度の開催は終了しました。
▼2023年度実施内容はこちら
https://mizuhoagrisupport.co.jp/kometaiken/
【農作物直売所】
定休日:年中無休(元旦・2日は休店)
営業時間:9:00~18:00
【蕎舎】
定休日:火曜日
営業時間:平日11:00~15:00/土日祝11:00~20:00
つくば市上郷にある「アオニサイファーム」さんでは、23品種のブルーベリーを摘み取り・食べ比べすることができます。
アオニサイファームさんのブルーベリー観光農園は、2023年にグランドオープンしたばかり。広い敷地内には約900本のブルーベリーの木が並び、「独立適応栽培」という手法で管理されています。
シーズン中は月・火曜日の定休日を除く朝9:00からオープンしていますが、イベントなどで変動することもあるため、摘み取り体験を希望する場合は事前予約がおすすめです。
ハウスの入り口。可愛らしいロゴマークが目印です。
約900本のブルーベリーの木はどれも青々としていて、子供でも手が届きやすい大きさに管理されていました。
ハウス内はシートでカバーされているので、歩きやすくて快適。
服の裾や靴も汚れず、女性や小さなお子様連れでも気軽に入ることができます。
ブルーベリーは1本残らずシステムで管理されていて、水やりや土壌のpH値(酸性度)管理など日々の作業もほぼ自動化しているというので驚きです。
はじめに敷地内にあるカフェの券売機でチケットを購入し、スタッフの方に渡してブルーベリー摘み取り体験の説明を受けます。
ブルーベリーは大きく分けて、6月~7月中旬が食べごろの「ハイブッシュ系」と7月中旬~8月中旬が食べごろの「ラビットアイ系」の2系統。さらに品種によってそれぞれ味や特徴が異なるそうです。
全体の6割程度を占めるというハイブッシュ系は大粒で皮が薄く、酸味と甘味のバランスに優れているのが特徴で、品種によっては500円玉くらいのサイズになるものもあるのだとか。
今回ライターがお邪魔したのはシーズン後半の8月中旬だったので、ラビットアイ系のエリアに案内していただきました。
摘み取り時間の制限はなく、その場で好きな実を摘み取って色々な品種を食べ比べすることができます。
品種だけでなく、実1粒1粒の味や香り、食感の違いを感じられるのも摘み取り体験ならでは。
最後にお土産のブルーベリーを詰めたら体験は終了です。
ブルーベリーの摘み取りは初体験でしたが、「これは甘くて柔らかい」「こっちは酸味があって爽やか」など、宝探しのように楽しむことができました。自分の手で収穫したものを持ち帰れるのも嬉しいですね。
ブルーベリー摘みを楽しんだ後は、敷地内にある「アオニサイカフェ」で一休みしていくのがおすすめ。
ブルーベリーを使ったオリジナルスイーツや自家製石窯ピザなど、ここにしかないメニューが味わえます。
農園の奥には芝生のドッグランもあり、カフェで飲食した方なら無料で利用できます。
※ワンちゃんを連れていく際はマナーを守って楽しみましょう
カフェは通年営業なので、ブルーベリーのシーズンオフでも利用可能。ワンちゃんOKのテラス席やバーベキューができる屋外ソファ席なども用意されています。
看板メニューの「ブルーベリーピザ」。
モッツァレラチーズと自家製無糖ブルーベリーソースにハチミツをかけていただくアオニサイファームさんイチオシのメニューです。
たっぷりのブルーベリーソースが乗った「アオニサイワッフル」やオリジナルドリンクの「ブルーベリーフィズ」「ブルーベリースムージー」なども人気。
オリジナルソースやジャムなどの加工品も販売しています。
もともとつくば市や農業に縁があったわけではなく、東京で広告デザイナーをしていたという代表の青木さん。ブルーベリー観光農園を立ち上げたきっかけについて尋ねてみました。
僕自身は京都出身ですが、妻の実家がつくばで、祖父を中心に芝生農家を営んでいました。でも後継者がいなくて、広大な農地を持て余してしまっている状態でした。ぼんやりと「いつか自分が何かできないかな」と考えていました。
当時僕は東京で広告デザイナーの仕事をしていたのですが、そのタイミングで京都からブルーベリー農園の立ち上げに関わる仕事の依頼が入ったんです。農業を知るまたとないチャンスだと思いました。しかもつくばは全国でも指折りのブルーベリー産地だし、祖父の農地を活かすこともできます。
すぐに妻と一緒に東京から京都へ引っ越して、広告デザイナーの仕事をリモートでしつつ、0からブルーベリー農園を立ち上げるという生活を送ることになりました。
整地からはじまり、苗の植え付け、管理、運営、プロモーションなど全て実践しながら学びました。
京都で3年ほど過ごした後、そのノウハウを持って家族でつくば市へ移住。
またつくば市で0から農園の立ち上げをしながら、新規就農者の認定手続きなどに奔走しました。つくば市は移住者が多いということもあり、周辺の市に比べても外部からの新規就農者が多いため、新規で農業をやるにはかなり良い環境だとこのときに知りました。
そして40歳にして新人ブルーベリー農家になり、2022年にアオニサイファームをプレオープンさせました。「観光農園」という形にこだわったのは、茨城に移住してきたときにスーパーで買った野菜が美味しくて驚いたことと、茨城へ観光に来るきっかけを増やしたかったという想いがあります。
つくばはブルーベリーの日本3大産地でもあり、美味しい農作物をきっかけに足を運んでいただき、そのまま筑波山に登るなど観光をしてもらえたら嬉しいなと思っています。
カフェのメニューにはこだわっています。「観光農園だけどカフェもすごい!」っていうのは、他にはあまりない魅力かなと思います。特にブルーベリーピザは京都にいた頃に仲間と開発した自信作です。ピザ生地も前日から発酵させて準備しています。お客さまにも好評で、日によっては60枚の生地がなくなってしまうこともあるくらいです(笑)
観光農園の方は、ケージに入れるかリードをつけて抱っこしていただければワンちゃんも一緒に入れます。
あとは、時間無制限のブルーベリー摘み取り体験というのも珍しいと思います。品種による味の違いをじっくり楽しんでもらいたいので、ハウスにいて暑くなったらちょっと休憩所に来て休んでもらい、また摘み取りに行っていただいてもOKです。
お客さまは意外と県外の方が多くて、半数以上がSNSなどを見て予約してきてくださっています。僕自身農家になる前までブルーベリーに特に関心がなかったのですが、ブルーベリー農家になって初めてその魅力を知ったところがあるので、お客さまにも同じように実感してもらいたいですね。
お客さまに「今まで食べたブルーベリーと全然違う」って言っていただけるのはすごく嬉しいです。以前、お母さまが1度食べたうちのブルーベリーのファンになってくださったということで、娘さんが毎週8パックくらい買いに来てくださっていたこともありました。
2、3歳くらいの小さい子も自分で摘み取ってバクバク食べてくれていたりします。子供が嬉しそうに食べているのを見ると本当に美味しいと感じてくれているんだなと思いますね。
〒300-2645
茨城県つくば市上郷 2223-1
https://aonisai-blueberry.com/
【ブルーベリー摘み取り体験】
事前予約可
※2023年度の体験は終了
※2024年度は6月上旬〜8月下旬頃開園予定
※カフェは通年営業
【カフェ】
営業日:木・金・土
営業時間:11:00~15:00
茨城県常総市にある「グランベリー大地」さんは、2022年12月にオープンした施設。こちらでは、関東初・日本最大級の「リフト式いちご狩り」を体験することができます。
グランベリー大地さんの空中いちご園では40分食べ放題制で全7種のいちご摘み取り・食べ比べをすることができます。昼間の体験は予約不要で、LEDのライトアップが幻想的な「夜のいちご狩り」のみ予約が必要です。
現在いちご狩りはシーズンオフですが、シーズン中は全国でも珍しいリフト式いちご狩りを体験するためたくさんの人が訪れていました。
天井から吊られた栽培棚や、真っ赤に色づいたいちごが頭上にある光景はなんだか近未来的。
およそ17,000平米のハウス内には約19万本のいちごが。自動で上下に動く可動式栽培棚のいちご農園としては日本最大規模なのだとか!
地面は全面シート張り。清潔で、車椅子やベビーカーが通れる広さも確保されています。
いちご狩りを満喫した後は、いちご農園に併設されている「グランベリーカフェ」で旬の味を楽しみましょう。いちごやシャインマスカットなど季節のフルーツを贅沢に使った限定スイーツを味わうことができます。
特にシーズン中でしか食べることができない「いちごズコットケーキ」や「いちごパフェ」は大人気。午前中だけで完売してしまう日もあるという逸品です。
もし秋に行くなら、自家栽培のさつまいもを使った秋限定スイーツがおすすめ。いちごハウスの隣にはさつまいも畑もあり、9月~11月の土日祝にはさつまいも掘り体験(要予約)も開催されています。
広報部の吉原さんに、グランベリー大地の魅力について尋ねてみました。
最大のメリットは、同じ栽培面積でも多くの本数を植えることができる点です。
通常の栽培方法だとうねとうねの間に作業用の通路が必要なのですが、リフト式にすることでその部分にもいちごが植えられるようになります。
従来だと大体10a(1,000平米)あたり7,000本くらいの定植本数が平均だと思いますが、当園では10aあたり約11,000本植えることができます。栽培棚が高さ2m30cmのところにありますので、暖房機から出た暖かい風が上に行き、暖房効率も良くなります。
また、地面がフラットで通路がかなり広くとれるため、ベビーカーや車椅子のお客様も不自由なくいちご狩りを楽しんでいただけます。女性の方はハイヒールでもいちご狩りが楽しめるようになっています。
清潔感があり開放的な空間で、国内では非常に珍しい空中いちご園を楽しめるのが最大の魅力ですね。
いちご狩りだけだとどうしても半年しか観光農園として機能しないと思っていたところ、隣に露地栽培用の畑があったので、そこを借りてさつもいも栽培をはじめました。つい先日予約の受け付けを始めたばかりなのでまだ反響はないのですが、みなさまのご参加をお待ちしております。
〒300-2507
茨城県常総市三坂新田町2383
https://granberry-joso.jp/
【いちご狩り】
昼は予約不要/夜は要事前予約
※2023年10月現在は受付停止中
▼詳細はこちらから
https://granberry-joso.jp/picking/
【さつまいも掘り】
要事前予約
▼詳細はこちらから
https://granberry-joso.jp/experience/
【カフェ】
定休日:6月~11月の月曜日
営業時間:
平日10:30~16:00(Lo15:30)
土日祝 10:30~16:30(Lo16:00)
黒岩 ヨシコ
インテリアと猫に詳しいフリーライター兼Webデザイナー。「ほどよい田舎に住みたい」という理由で千葉県東葛飾エリアから茨城県つくば市へ移住。幅広い興味と探究心を日々文章に注いでいます。