出会いや体験を通じて子どもの感性を育てるアフタースクール『こそだての家』
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2023.12.04
出会いや体験を通じて子どもの感性を育てるアフタースクール『こそだての家』
出会いや体験を通して「らしさ」をみつけるアフタースクールとして、小学生や就学前の子どもたちを対象に、つくば市・つくばみらい市の森や畑を活かした自然体験をおこなっている『こそだての家』。2022年4月のオープン以来、たくさんの子どもたちが参加しています。その活動と思いについて、代表の小林力(こばやしりき)さんに伺いました。

 

『こそだての家』をレポート!

心地よい木漏れ日を感じながら、常緑樹の葉っぱが揺れる道をずんずん進んでいく。するとそこに現れたのは、子どもたちの遊び場。ここは、小学生や就学前の子どもたちを対象に、つくばの森や畑を活かした自然体験をおこなっているアフタースクール『こそだての家』の外遊びの拠点のひとつ、「こそだての村」 です。

林の中には、大きな木に吊るされたブランコや、木と木の間に縄をくくって作ったジャングルジムがあり、子どもたちは走り回って追いかけっこしたり、焚火に木をくべたり、”側転大会”をしたりと、のびやかに楽しんでいました。

この場所は、『こそだての家』の協力者から借りている場所で、ほかにも子どもが遊べる拠点が複数あるのだそう。
参加している子どもの人数はその日によって異なるものの、平均15人~20人前後で、年長さんから小学6年生までが集います。

自然豊かな遊び場と日常を繋ぐ黒板バス。参加している子どもの多い小学校への送迎も行っています。

サッカーをしたり、新しいゲームを考えて遊んだり、ただただ走り回ったり。
何でもできるし、何をしても楽しい。

林の中には子どもが主体となって作られた遊具たちがいくつか。
木と木へ無作為に繋いだように見えるロープは、子どもの背よりも高く設置されています。
その上を歩いたり、ぶら下がったり遊び方はさまざま。

こちらの女の子たちは、ブラジルへ続く穴を掘りながら、
掘った穴から出た土を集めて、ステージの土台を作りたいとのこと。

広場の中央にある、ダイナミックなブランコ。
あえて人の行き来が多い場所に設置することで、ブランコの助走を補助したり、注意喚起の声掛けなどのコミュニケーションを促すほか、周りを見ながら遊ぶ注意力が育つそうです。

レンガで作った釜に薪をくべる子どもたちの手つきも慣れたものです。

フライパンで炒っているのはどんぐりやクルミ。外皮をむいて食べます。

この日のおやつは、釜で炊いたごはんで作ったおにぎり。
おにぎりを握るのも、もちろん子どもたちです。

 

『こそだての家』とは?

2022年4月にスタートしてから協力者も増え、参加する子どもたちや応援してくれている人達を巻き込みながら、つくば市・つくばみらい市を中心に子育てのコミュニティを作っている『こそだての家』。

ここからは、代表の小林力さんにお話を伺いながら、『こそだての家』の取り組みについて深掘りしていきます。

『こそだての家』代表 小林さん
『こそだての家』代表 小林さん
『こそだての家』代表 小林さん

プロサッカーコーチ(モンテネグロ1部Grbaljトップチーム、アルビレックス新潟シンガポールトップチーム、ジュビロ磐田U-15、Jリーグ選抜U-13、4歳〜15歳所属の街クラブで育成統括など)→プロジェクトマネージャー(プロジェクトマネジメント専門企業)を経て、一般社団法人こそだての家を設立。

資格:こそだて師/キャンプインストラクター/救急救命法MFA/RAC(川遊びリーダー)

『こそだての家』の特長

『こそだての家』代表 小林さん
『こそだての家』代表 小林さん
『こそだての家』代表 小林さん

僕らがやろうとしていることは、子どもたちが自然体験を通じて生き方を学び、互いに育ち合っていく環境を作ることです。

『こそだての家』の「こ」は「個」「己」という意味を込め、平仮名で表記しています。そこには大人も含まれます。
子どもと大人がそれぞれの個性を輝かせ、己を磨き、逞しく生き抜くための学びを一緒に探していくことを意識しながら活動している事が特長だと思います。

また、こうした自然育児は、週末にやっているところが多いと思いますが、アフタースクールとして平日の放課後に行っているところは、まだあまりないと思います。

曜日と時間について

『こそだての家』代表 小林さん
『こそだての家』代表 小林さん
『こそだての家』代表 小林さん

週5日間の平日で、土日は現在活動していません。
主な活動の中心はつくば市・つくばみらい市の森や畑で、長期休みは石岡市や桜川市にも遊びに行きます。
参加している子どもたちは、週1回から週5回まで、参加頻度も様々です。

活動している時間帯は、保護者の方が現地まで直接子どもを送迎する場合は、だいたい15時半から18時までです。

また、「みどりの学園義務教育学校」は参加する子どもが一番多いため、バス送迎も実施しています。バス送迎を利用する場合は、14時40分ぐらいに迎えに行き、終わりは18時半になります。帰りも希望者はみどりの駅までバスで送り、駅まで保護者の方が迎えに来ています。

 

『こそだての家』での体験について

こそだての家で体験できること

『こそだての家』代表 小林さん
『こそだての家』代表 小林さん
『こそだての家』代表 小林さん

わかりやすく言うと、自然の中で、木工や料理、時には畑で野菜を作るなど、遊びながら自然の循環に触れることでしょうか。

自分たちで火を起こし、釜でごはんを炊いておにぎりを作ったり、畑でにんにくを植えたり、コンポストを作って自分たちが出した生ゴミを堆肥にしたりする他、トイレ作り、遊具作り、穴掘りなど、子どもたちと一緒にいろいろなことをしています。最近はマテバシイやクルミを焼いて食べるのが子どもたちの間で流行っています。

毎回その日に何をするかある程度決めているのですが、子どもたちの体調や全体の雰囲気を見て、子どもたちのやりたいことを尊重しながら、実際に何をするかを決めています。

子どもの希望が優先される場なので、あまりこちらの予定通りにはならないですね。

協力者との関わり

『こそだての家』代表 小林さん
『こそだての家』代表 小林さん
『こそだての家』代表 小林さん

『こそだての家』には、現在100人くらいの大人の協力者がいます。

協力者のなかには色々なジャンルの特技やノウハウを持っている方がいて、実際に子どもたちとふれあいながら、料理や竹細工を作るなど、様々な体験を提供してくれています。


協力者の紹介 (こそだての家リーフレットより )
さまざまな特技を持った協力者の数は100人以上。地域の協力は心強い味方です。

雨の日の遊び方

『こそだての家』代表 小林さん
『こそだての家』代表 小林さん
『こそだての家』代表 小林さん

危険の少ない、小雨程度の雨であればだいたい野外で遊ぶことが多いです。火起こしは毎日1人か2人ぐらいでしていますが、雨の日は中々火がつきにくいため、乾いた木や葉っぱを持ってくる子や、タープをはる子、火の番をする子など、子どもたちの中で自然と役割分担をして協力して行っており、雨の日は雨の日で普段と違った学びが生まれていると思います。他には、穴を掘って雨の泥が溜まったところに飛び込んで遊び始める子どももいます。

嵐など、屋外が危険な空模様の時は、世界の300種類のボードゲームが楽しめるボードゲーム場を運営されている協力者がいるので、スペースをお借りして、遊んだりしています。

他にも文庫本がたくさん置いてあるログハウスのような場所をお借りして、本を読んだりしています。子どもたちが、遊び場で見つけた蛇を本で調べていた時もありました。屋内に行くのは、多い時でも月に3回か4回くらいです。

屋外で子どもたちが遊ぶときのリスク管理

『こそだての家』代表 小林さん
『こそだての家』代表 小林さん
『こそだての家』代表 小林さん

どこまでをリスクと考えるかですが、ナイフで軽く指を切ってしまうとか、焚き火の火の粉で少し火傷をしてしまうといった比較的軽度の危険についてはあらかじめ遠ざけるつもりはありません。それよりも、子どもたち自身の危険予測能力を高めていくことが、子どもたちの力になっていくと考えています。

たとえば初めての場所に行った時は「危険発見ゲーム」と題して「ここでは今、どんな危険がありそうか?」というのをみんなで言い合ったりします。それによって事前に危険を回避することができます。

もちろん、命に関わることはしっかり管理しています。
例えば薪割りでの斧、高温状態のピザ釜などは大人が行ったり、経験値が高い子には任せながら大人が寄り添ったりします。僕たちの活動場所ではあまり通らないですが、特に危ないのは車です。駐車場で遊ぶことは薪割り以上に危険だと思います。

また、もしもの場合は私自身がMFAという救急救命の資格を持っていますし、他の協力者の中にも処置ができる人間がいます。

 

『こそだての家』が目指す子どもの成長について

こそだての家のコンセプトや目的

『こそだての家』代表 小林さん
『こそだての家』代表 小林さん
『こそだての家』代表 小林さん

出会いや体験を大事にして、子どもたちの感性を広げていくことです。

子どもたちは一人ひとりとても多様で個性も違えば成長のフェーズも違います。自然に慣れている子どもや人間関係に慣れている子もいれば、そうでない子どももいます。

そんな子どもたち一人ひとりの「やりたい」を、一緒にあるいは自分自身で見つけていきます。そして自分を取り巻く環境や人間関係に安心感を得て、あたらしい挑戦を始めていきます。その挑戦からトライ&エラーが生まれて、子どもたちの学びに繋がっていきます。

その学びを積み重ね、さまざまな人間関係の中でそれぞれの個性が輝けるようになることを目的として取り組んでいます。

子どもとの関わり方で意識していること

『こそだての家』代表 小林さん
『こそだての家』代表 小林さん
『こそだての家』代表 小林さん

特に注力していることは、子どもたちにもそれぞれ成長のフェーズが存在する中で、私たち大人がどのように関わるとその子の学びや成長につながるのかを見極めることです。

たとえば、荷物を運んでいる子どもが「重いから持って」と言ってきたときに、もしその子の心が不安定で、安心を得たい時のコミュニケーションであった場合なら持ちますし、そうでなければこちらの対応もまた違います。その子の個性や状況を見極めて、きめ細かく対応しています。

子どもたちの成長を感じるエピソード

『こそだての家』代表 小林さん
『こそだての家』代表 小林さん
『こそだての家』代表 小林さん

子どもたちは自然のなかで過ごすことで、視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚の五感の力がついていきます。
また、子ども同士でなにか問題が起きた時、解決することに積極的に関わりを持てるようになる子は多いです。当初は誰かが喧嘩していても、何かに集中して気づかなかった子が、だんだん周りの状況や変化が見えるようになっていきますが、それも五感の力が高まっていくからだと思います。空気の匂いが変わったから雨が降りそうだと気づくようになるのもそうです。

積極性ということに関連しますが、これまで参加した子どもの中には不登校の子もいました。ですが、面白いことに、多くの子が学校に通うようになりました。
不登校の子の多くは子ども同士の人間関係が原因になっていると聞いた事がありますが、『こそだての家』で子ども同士の問題解決に取り組んでいくことで、人間関係の中で自分らしく過ごせる術を身に着けられるからなのではないかと思っています。

他にも、あるとき遊び場で雨が降り始めた時、ある女の子が「私は雨に濡れたことがない」と言い出したんです。今の子どもたちの中には、雨が降ったら屋内で遊んだり、保護者の方が車で送り迎えするなど、実際に雨に濡れる機会がない子も多いです。
そんな子でも、ここに来て1ヶ月も経つと自分の濡れた靴下を焚き火の上で何事も無かったように乾かしていたりします。濡れるというストレスに対して耐性ができるんですよね。

自然の中は不便な状況なので、自分たちで工夫して楽しむことが必要になりますし、問題に対しての解決力も身についてくるので、そんな場面を目にしたときに子どもの成長を感じます。

今後考えていることやアイデア

『こそだての家』代表 小林さん
『こそだての家』代表 小林さん
『こそだての家』代表 小林さん

今後考えていることはたくさんありますが、やっぱり一番は子どもとの関わりの質を上げること。そして、子育てのコミュニティを広げていくというところを目指していきたいです。
子育て世代だけじゃなく、結婚をしていない方や、子どもがいない方や、ご年配の方でも、子どもと関わることを楽しみたい人が自然と集まってきてくれたらいいなと思っています。

 

保護者との関わり方

『こそだての家』に子どもを預ける保護者について

『こそだての家』代表 小林さん
『こそだての家』代表 小林さん
『こそだての家』代表 小林さん

保護者の方に共通しているのは、自然体験であるとか、僕らが大事にしている人との出会いというものを、子どもが成長する上で大切だと感じていることですね。

利用される保護者の方には、仕事があって子どもを預けなくてはならない事情があり放課後学童的な使い方をされる方や、習い事の一つとして通わせたいという方がいます。他にも、色々な体験をしていくことで感性を磨いてほしいと考える保護者の方もいらっしゃいます。
実際に保護者の方からは「子どもが家で主体的に動くようになった」とか「お手伝いをするようになった」という言葉をもらうこともあります。

私は、子どもたちが自分たちで想像しながら楽しんでいる姿を見た時に喜びを感じているのですが、それと同じように、保護者の方が、自分の子ども以外のまわりの子に目を向け始めた時や他の子の成長に興味を持ち始めた時にも喜びを感じています。
例えば、毎日の活動の様子を保護者の方へLINEで送ったりするのですが、その日は来ていなかった子どものお母さんが「今日はこんなことがあったんですね」と返信をくれたり。子育てのコミュニティに入ってきてくれている感じがうれしいです。

実際に体験会に参加した保護者の声

小学2年生の女の子と1年生の男の子のお母さん
小学2年生の女の子と1年生の男の子のお母さん
小学2年生の女の子と1年生の男の子のお母さん

保護者の方に共通しているのは、自然体験であるとか、僕らが大事にしている人との出会いというものを、子どもが成長する上で大切だと感じていることですね。

利用される保護者の方には、仕事があって子どもを預けなくてはならない事情があり放課後学童的な使い方をされる方や、習い事の一つとして通わせたいという方がいます。他にも、色々な体験をしていくことで感性を磨いてほしいと考える保護者の方もいらっしゃいます。
実際に保護者の方からは「子どもが家で主体的に動くようになった」とか「お手伝いをするようになった」という言葉をもらうこともあります。

私は、子どもたちが自分たちで想像しながら楽しんでいる姿を見た時に喜びを感じているのですが、それと同じように、保護者の方が、自分の子ども以外のまわりの子に目を向け始めた時や他の子の成長に興味を持ち始めた時にも喜びを感じています。
例えば、毎日の活動の様子を保護者の方へLINEで送ったりするのですが、その日は来ていなかった子どものお母さんが「今日はこんなことがあったんですね」と返信をくれたり。子育てのコミュニティに入ってきてくれている感じがうれしいです。

取材を終えて

今回は、主につくば市・つくばみらい市で行われている子育てコミュニティ『こそだての家』を取材しましたが、代表の小林さんとスタッフのみなさんが、子どもたち一人ひとりの成長段階を見極めてきめ細やかにサポートしている様子がとても印象的でした。子どもたちにもその安心感が伝わるためか、のびのびと過ごしていました。

つくばエリアに住む子育て世代にとって、『こそだての家』は力強い味方になってくれそうです。
定期的に実施されている見学体験会のほか、さまざま取り組みを発信しているので、ご興味のある方はぜひInstagramもご覧ください。

 

この記事をかいた人
この記事をかいた人

磯木淳寛 (いそきあつひろ)

教育事業、地域ブランディング。地域のストーリーを題材にした商品開発にも取り組む。関係人口を育む、インタビューと執筆のワークショップ「LOCAL WRITE」主宰。

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