家具選びで家族との関係が変わる?
北欧家具の名作が揃う『Shinc lab.』代表・田中さんに聞く、幸せな空間のつくり方
2025年7月、つくば市にオープンした『Shinc lab.(シンクラボ)』。louis poulsen(ルイスポールセン)など、時代を超えて愛される北欧家具を取り扱うインテリアショップ。 一歩足を踏み入れると、そこには単なる「買い物」の場ではない、理想の暮らしを具現化した心地よい空間が広がっています。代表の田中友幸さんに、なぜ今「家づくり」ではなく「住まいづくり」が重要なのか、お話を伺いました。

■「家」が完成した先にある、本当の幸せを見つめて
「本来、『住まいづくり』のために家づくりを始めたはずなのに、いつのまにか建てること自体が目的になってしまっている。そこに社会課題のようなものを感じているんです。」
そう語る田中さんは、元々建築業界の出身。ハコ(建物)づくりに熱中する一方で、中身であるインテリアが後回しにされてしまう現状に疑問を抱き、インテリアの世界へ転身しました。 背景にあるのは、大学時代に学んだ「福祉」の視点、そして幸福度世界一と言われるフィンランドでのホームステイ経験です。
「フィンランドでは、インテリアを整えることが国民の幸福度を上げる施策の一つとして捉えられていました。幸せも不幸せも、家族と過ごす時間の質に左右される。それなら、より快適に、笑顔で過ごせる空間を提案したいと思ったんです。」
例えば、小さなお子さんがいる家庭。ソファを汚して「何やってるの!」と叱ってしまう場面でも、メンテナンスしやすい生地や、子どもが跳ねてもびくともしない堅牢な家具があれば、親の心には余裕が生まれます。 家具選びを変えることは、家族への「言葉」や「接し方」を変えること。Shinc lab.には、そんな暮らしの余白をもたらしてくれる数々の家具が揃っています。

■「今」だけではなく「30年後の景色」を想像する家具選び
家具を選ぶ際、してしまいそうなのは「今の気分」や「とりあえず」で決めてしまうこと。しかし、田中さんは「自分と『かぞく』の棚卸し」が大切だと言います。「家具は20年、30年と使い続けられるものです。だからこそ、今だけでなく『30年先にどんな景色の中で暮らしていたいか』という時間軸で選んでいくことが重要になります。」流行を追って買い足していくのではなく、数十年後の理想像を想像しながら、一つひとつを吟味して迎える。長く使い込まれた家具には、家族の記憶というストーリーが刻まれます。それが子世代に受け継がれたとき、モノを大切にするという文化が自然と家庭内に根付いていく。これこそが、田中さんの掲げる「住まいづくり」の大切にしているポイントです。

■靴を脱いで「理想の日常」を体感。つくば店に込められた工夫
つくば店の設計には、田中さんのこだわりが随所に散りばめられています。コンセプトは「自分の暮らしを想像できる場所」。店内は美術館のような美しさを持ちながらも、各エリアが一つの「部屋」としてコーディネートされており、実際の生活動線をイメージしやすい構成になっています。驚くのは、ショップでありながら靴を脱いで上がるスタイルであること。
「床を一面無垢材にすることで、お子様連れでも安心して選べますし、裸足やスリッパでフロアを歩けるので、より自宅に近い感覚で家具の質感や座り心地を体感していただけます。」
オンラインで家具が買える時代だからこそ、実際に触れ、腰掛け、その家具が自分の暮らしをどう彩るかを肌で感じる体験を大切にしています。

■『かぞく』以上の、くらしのパートナーとして
暮らしの変化には不安がつきものですが、Shinc lab.は販売して終わりではありません。 「かぞく以上のくらしのパートナー」として、インテリアのアドバイスはもちろん、納品時には実際に自宅へ伺って間取りに合わせた提案をするなど、長年愛用した家具のメンテナンスも行っています。中には、10年来の付き合いになるお客さんもいるのだとか。
「家づくり、住まいづくりに悩んだら、まずは気軽におしゃべりしに来てほしい。」
単なる家具店という枠を超え、つくばの地に根ざした「暮らしの相談所」。
ここで見つける一脚の椅子が、あなたの家族の30年後を、もっと明るいものにしてくれるかもしれません。
SHOP INFORMATION
Shinc lab. つくば
住所:〒305-0033 茨城県つくば市東新井32-15
電話番号:029-875-8795(受付時間 10:00~17:00)
営業時間:平日:11:00~16:00 / 土日祝:10:00~18:00
定休日:水・木曜日(祝日は除く)、毎月第1火曜日
HP:https://shinc.co.jp
Instagram:https://www.instagram.com/shinc_lab
時が経つほど伝わる家具の魅力。
「家貨屋」と見つける、つくばでの新しいヴィンテージライフ
つくば市古瀬地区、のどかな田園風景が広がる一角に、時を止めたような静謐な空間があります。国登録有形文化財「つくば文化郷」の母屋に店舗を構える「家貨屋kakaya(かかや)」(代表取締役/小関広記氏)は、国内外のヴィンテージ家具やアンティーク雑貨を取り扱うインテリアショップ。 2021年6月にこの地での営業をスタートした同店は、単なる中古品の販売店ではありません。
家貨屋kakayaは、店舗運営にとどまらず「OLD NEW MARKET日本橋」や「東銀座モダンシックマーケット」といった大規模な蚤の市を主催しています。実店舗という「面」と、イベントという「点」を組み合わせたハイブリッドな活動を通じて、古いものが持つ「正当な価値」を伝え続けています。

■1,200点の古道具が語りかける「時間の豊かさ」
暖簾をくぐり、かつての庄屋屋敷の重厚な空間へ一歩足を踏み入れると、そこには常時1,200点を超える古道具たちがひしめいています。エリアごとに異なるテーマでコーディネートされた店内は、まるで時代を旅するかのよう。
お話を伺った店舗運営を担当する齋藤さんが「自分の生活を想定し、イメージを膨らませてほしい。」と語る通り、置く場所や角度によって表情を変える家具の提案は、プロのコーディネーターからも一目置かれています。齋藤さん自身、無類の椅子好き。
「この道に入るきっかけは、イギリスの古い家具との一瞬の出会い。現代の効率重視の製品にはない、昔の道具ならではの魅力に強く惹かれました。新品の家具は傷がつくと価値が下がりますが、ヴィンテージは時間を刻むごとに価値が上がっていく。木に触れたときの柔らかさや、汚れさえも魅力になるんです。」
どこでも買えるものとはまた違う魅力があるヴィンテージ家具。長い年月を経たからこそ出る色味や傷などこの世に一品しかないという価値が存在するのが魅力だといいます。

■修理をして次へ紡ぐ、新しいストーリー
家貨屋の最大の特徴は、入荷した古道具をそのまま販売するのではなく、現代の生活に馴染むよう「前向きな修繕」を施している点にあります。例えば、そのままでは使いにくい古い引き出しをスムーズに直したり、現代の暮らしに合わせて別の用途を持たせるような加工を施したりすることもあります。それは、古いものを「古いまま」保存するのではなく、「新しい価値を持った道具」として転生させる作業です。また、家具は置く場所や向きによっても表情が変化します。商品の配置を少し変えるだけで印象が変わり、何度訪れても新たな発見がある空間になっています。
近年は、欧米の商品だけでなく、国内の古道具にも改めて光を当てています。「今こそ、日本に元々あった古いものに魅力を見つけていく時代だと思います。」と、国内外の広いネットワークを持つ代表の小関氏とともに、次なる「一生もの」を掘り起こしているそうです。

■都心からつくばへ。変化する暮らしに寄り添う家具選び
移住者が増え続けているつくば市。齋藤さんは、この街を「都心に近いドライな部分と、地方都市の濃密な付き合いが共存する特殊なエリア」と捉えています。田園風景もある一方で、研究機関や大学も多く、日常的に英語が聞こえてくるような国際色豊かな雰囲気があるのが茨城県TX沿線エリア。移住や新生活に伴う住居の変化に合わせ、家貨屋では「小さめの家具」からのスタートを推奨しています。「大きな家具をいきなり選ぶのは勇気がいります。まずは小さなスツールや飾り棚から、自分の感性を試してみてください。椅子に関しては、ぜひ実際に座って決めてほしい。見た時の直感と、触れた時の納得感の両方を感じてほしいんです。」オンラインでの購入が当たり前になった現代だからこそ、実物に触れ、納得して選ぶ一期一会の体験を大切にしています。大切にしていた商品が売れる際、齋藤さんは「さようなら」と寂しさを感じることもありますが、それ以上に「好き」という気持ちをお客さまと共有できる喜びに勝るものはないと言います。
■「今」を肯定する、自由なインテリア
「アンティーク家具はずっと使い続けなければならない」というイメージがあるかもしれません。しかし、家貨屋が提案するのは、もっと自由な向き合い方。「その時の自分がどう暮らしたいか。変化する感性を基準に選んでもいいんです。飽きたら、また誰かに譲ればいい。変化を恐れず、今の自分に合うものを選んでみてください。」つくば文化郷の庭に流れる季節の風を感じながら、数十年、数百年の時を越えてきた家具と向き合う時間。そこには、忙しない都心での生活では忘れがちな「時間を刻む豊かさ」があります。家貨屋で出会う魅力あふれる家具とともに自分らしい暮らしをこの場所で営むことも選択肢のひとつとしてみてはいかがでしょうか。

SHOP INFORMATION
家貨屋 ― kakaya ―
住所:〒305-0022 茨城県つくば市吉瀬1679-1 つくば文化郷母屋
電話番号:080-4407-8512
営業時間:月・火・木〜日曜日:11:00~17:00
定休日:水曜日
HP:https://www.kakaya.online
Instagram:https://www.instagram.com/ka_ka_ya
暮らしの音に耳を澄ませて。
職人の想いを繋ぐ『手乃音』で、移住後の暮らしを彩る一生モノを探す
つくば文化郷の敷地内、歴史の重みを感じさせる建築が並ぶなか、2019年3月に稲敷市からつくば市へ移転オープンした国内の職人や作家が手がける生活道具を扱う「手乃音(てのね)」。効率や利便性が優先される現代において、あえて手間暇のかかる「手仕事」の道具を選ぶ理由はどこにあるのか。店主の本郷さんに、道具がもたらす心のゆとりと、その背景にある物語を伺いました。
■店主自身の肌で感じた「本物」だけを届ける。作家の想いを伝えていく
元々はオンラインショップからスタートした「手乃音」。しかし本郷さんは、商品を実際に手に取り、その重みや質感を確かめてほしいという強い想いから2015年に稲敷市で実店舗を持ち、その後この由緒ある場所にお店を構えました。元々美術関係の仕事に携わっていたこともあり、ものづくりに対する造詣が深いからこそ、伝えたい価値があります。「作家さんがデザインを厳選して形にするまでの苦労や、長年の修行で身につけた技術。それらが凝縮された商品の魅力を、もっと広く伝えていきたいです。」職人の手仕事による道具は、大量生産品に比べれば高価に感じるかもしれません。しかし、本郷さんは「安い・高い」という表層的な判断基準ではなく、そこに至るまでの過程や技術という「価値」を知ってほしいと言います。 店内に並ぶのは、基本的に本郷さん自身が実際に使い、良さを実感したものばかり。あるいは旅先で出会い「この方の作品を届けたい」と心から思えたものだけ。「『おすすめはありますか?』と聞かれたときに、自分の言葉で、きちんと責任を持って答えられるものだけを並べておきたいです。」そのこだわりが、訪れる人の信頼を生んでいます。また、店舗では定期的に個展や展示会も開催されています。店内に並べているだけでは伝えきれない、作家の背景を深く知るための貴重な機会。「作家さんの工房へ足を運び、そこで見た景色や、作家さんの考え、思いを伝える。こうした機会を持つことで、お客様がモノへの愛着をより深めていただけるのではないかと考えています。」見た目や金額だけで判断するのではなく、作られた背景を知ることで、その道具は「暮らしの大切なパートナー」へと変わる。忙しい日々の中で、気に入った手仕事の道具をプラスする。それだけで、日々の暮らしは驚くほど豊かに、心安らぐものになるはずです。

■「使うこと」で育つ愛着。壊れても直し、共に時を重ねる喜び
「せっかくの良いものだから、もったいなくて使えない。」そんな風に、つい「ご褒美」の品を仕舞い込んでしまうこともあるかもしれません。しかし、本郷さんは「道具は使うことでこそ愛着が湧き、完成していくものです。」と説きます。例えば木の器。使わずに置いておくと歪みが生じることもありますが、日々使うことで馴染んでいきます。また、竹で編まれた籠細工などは、時を経るごとに色が深く変化し、世界にひとつだけの自分の道具へと育っていきます。 店内でひときわ目を引くのは、作り手が少なくなっている福島県奥会津地域の「またたびの米とぎざる」。地域で愛されている工芸品です。若い頃に家族からかけられた「壊れにくいものを作ってほしい。」という言葉をヒントに考案された編み方は、驚くほど堅牢。地元では20年以上も使い続けている人がいるほどで、その丈夫さは折り紙付きです。 そして、手仕事の道具の最大の魅力は「修繕ができる」という点にあります。手仕事道具の全てが修繕できるわけではないですが、「壊れたら買い替える。」という消費のサイクルが一般的になった今だからこそ、一つのものを手仕事で直しながら、長く、大切に使い続ける。その姿勢そのものが、日々の暮らしを整え、心を豊かにしていくことにつながるのではないでしょうか。

■生活の知恵から生まれた、現代にこそ必要な「便利な道具」
最後に、こだわりのセレクトを続ける本郷さんに暮らしを豊かにしてくれる商品として「ほうき」を教えていただきました。
「ほうきの良いところは、電気がなくても使えること。掃除が楽しくなりますし、災害時にも役立ちます。デスク周りを掃除する小さなものから、床を掃く大きなものまで、サイズ違いで持っておくと本当に便利ですよ。」
手乃音で扱う「ほうき」は、フクシマアズサさんのもの。筑波大学在学中にほうき作りの体験をした際にほうきに魅了され、卒業後にほうき職人のもとで修行を積まれました。現在も茨城県内で活動されています。ほうきの材料となるのは、イネ科の植物「ほうきもろこし」。フクシマさんは、理想の柔らかさを実現するために種から育てていらっしゃるといいます。一般に市販されているほうきは長さを揃えるために穂先を切るのが通例ですが、実はその穂先こそが最も柔らかく、掃き心地が良い部分。あえてその穂先を切らず、同じ長さのものだけで仕立てあげています。そのため、その年の育ち具合によって、長いほうきができたり、短いほうきができたり。
さらに一番のこだわりは、通常ワイヤーで仕上げる編み上げ部分を丈夫な糸で仕上げ、全て天然のもので仕上げている点です。そうすることでほうきが役目を終えたあとに土に埋めればそのまま土に還ることができます。
環境の変化に応じた持続可能なものづくりも、手仕事ならではの魅力のひとつとなっています。

■手から生み出される「音」に耳を澄ませて
店名である「手乃音(てのね)」の由来は、その名の通り「手の音」。手仕事の制作現場で、作り手の手から生み出される様々な音。
「作品そのものだけでなく、作品ができるまでの過程、そして同じジャンルのものを作っていても一人ひとり違う作り手の思いや考えまでもお伝えできたら。」
本郷さんのその願いは、お店に並ぶ一つひとつの道具を通じて、訪れる人の心に静かに響いていきます。理想の暮らしとは、何気ない日常の中に、信頼できる「手の音」を感じる道具があること。そんな豊かな時間を、このつくばの地で見つけてみてはいかがでしょうか。

SHOP INFORMATION
手乃音(てのね)
住所:〒305-0022 茨城県つくば市吉瀬1679-1 つくば文化郷母屋
電話番号:090-9304-8189
営業時間:火曜日・木曜日・金曜日・土曜日:11:00~16:00
定休日:臨時休業あり。ご来店前にHPカレンダーかSNS等でご確認ください。
HP:https://tenone-teshigoto.com
Instagram:https://www.instagram.com/_tenone__
