茨城県つくばエクスプレス沿線エリアの個性あふれる珈琲店を訪ねて
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2025.08.20
茨城県つくばエクスプレス沿線エリアの個性あふれる珈琲店を訪ねて
学術都市、豊かな自然など、多彩な魅力を持つ、茨城県つくばエクスプレス(以下TX)沿線エリア。こだわりのコーヒーに出会えるお店の充実も、地域の特色のひとつです。しかも、休日のひとときや日々の暮らしを豊かにしてくれる個性派ぞろい。今回はその中から、選りすぐりの3店舗をご紹介。山の上のコーヒースタンドからフードも充実のカフェに、自家焙煎のコーヒー店まで。おいしい1杯を求めて、お店めぐりするのも楽しいです。

ケーブルカーで行く、山の上のコーヒースタンドへ

標高877mと日本百名山の中で最も低く、登山はもちろん、ケーブルカーやロープウェイで気軽に訪れることができる筑波山。「877Stand」は、その筑波山の山頂付近、筑波山ケーブルカー・筑波山頂駅のすぐそばに立つコーヒースタンド。昔ながらの茶屋が並ぶ一角に佇んでいます。

ケーブルカーで行く、山の上のコーヒースタンドへ01

お店を運営するのは、2014年に都内からつくばへ移住した、デザイナーの岩田博嗣さんとコピーライターの根本美保子さん夫妻が立ち上げたデザイン会社「TURBAN」。これまで、筑波山のリブランディングプロジェクト「筑波山・霞ヶ浦広域エリア観光連携促進事業」への参加や、ウエブサイト「Mount Tsukuba」の運営、筑波山中腹に自社デザインの筑波山グッズを販売する「BASE 877」を開店するなど、地域に密着した活動をしてきました。

そして2023年10月。地域の人々の後押しを受けて、戦前に筑波山で開業し、2022年に惜しまれつつ閉店した「茶屋たがみ」の跡地に「877Stand」を開店。昭和を感じる外装はそのままに、内装は大幅にリノベーション。山小屋風でほどよく現代的な居心地のいい店内には、靴を脱いでくつろげる小上がりもあります。

ケーブルカーで行く、山の上のコーヒースタンドへ02
木のぬくもりも心地いい店内からは、晴れていれば関東平野、日光、那須の連山が望めます
ケーブルカーで行く、山の上のコーヒースタンドへ03
ケーブルカーで行く、山の上のコーヒースタンドへ04
店内では、キーホルダー、手ぬぐい、Tシャツなど自社デザインのグッズの販売も。おみやげはもちろん、普段使いしたくなるアイテムがずらり

「BASE 877でよく耳にしていたのが、お客様の『コーヒーが飲みたい』という声でした。BASE 877をカフェと思って、立ち寄られる方も多くて。カフェの需要の高さを日々感じていたんです。それに、もし筑波山の上にコーヒースタンドがあったら嬉しいな・・・と空想していたこともあったので、自分たちでやってみようかと。

ならば、ここでしか飲めないコーヒーにしたい。自分で道具を持参してドリップコーヒーを楽しむ登山客はいるので、本格的なマシンで淹れるエスプレッソドリンクを提供する店にしました」と岩田さん。

おいしい1杯をかなえるべく、イタリア製の高級マシン『ラ・マルゾッコ』をケーブルカーで運搬。使用するのはつくばと東京都墨田区にあるハンドクラフトコーヒー製造販売所「SUNSHINE STATE ESPRESSO」のスペシャルティグレードのコーヒー豆です。

オリジナルブレンドのMt.Tsukuba Blendは、ベリーを思わせるすっきりした飲み口ながら、チョコレートっぽいコクを感じる濃厚な味わい。ミルクとの相性もよく、カフェ文化が根付くオーストラリアで定番のフラットホワイトも楽しめます。

ケーブルカーで行く、山の上のコーヒースタンドへ05
フラットホワイト700円は、フォームミルクのまろやかさとコーヒーのコクのバランスが絶妙。米粉のワッフル450円をお供に

「登山がてらはもちろん、ケーブルカーで遊びに来た方にもふらっと立ち寄ってもらえたら。空気の澄んだ山の上で飲むコーヒーはいっそうおいしいので、思い出になる1杯を提供できたらと思います」

筑波山中腹のショップ「BASE 877」は現在改装中ですが、店名を「877」に改め、2025年夏以降に営業を再開予定。おやつやコーヒーが楽しめるカフェスペースも登場するそう。乞うご期待。
※山頂のコーヒースタンド「877Stand」は現在も営業を行っております。

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お子さんの誕生を機につくばへ移住した岩田さん(左)、根本さん(右)夫妻と、スタッフの中山文乃さん(中央)

コーヒーもフード&スイーツも、メルボルンスタイルで

茨城県八千代町出身の平野裕輝さんが営む、つくば市吉瀬の「Chapio Coffee Brewers」。もともとコーヒー店だったログハウス風の建物にはペットOKのテラス席が完備され、周囲の緑が気持ちよく目に映ります。

コーヒーもフード&スイーツも、メルボルンスタイルで01
2019年につくば市金田にオープンし、2023年に吉瀬に移転。現在は、移転前の金田の店舗に支店を開く準備をしているそう
コーヒーもフード&スイーツも、メルボルンスタイルで02
木のぬくもりも感じられる店内は、天井が高く、ゆったりくつろげる雰囲気

店主の平野さんは、サイフォンコーヒーで有名な椿屋珈琲店、ハワイ発のアイランドヴィンテージなど、都内のコーヒー店で約10年働いた後、コーヒーの街として世界的に知られるオーストラリアのメルボルンへ。現地のカフェで働いて、さらに腕に磨きをかけました。

コーヒーもフード&スイーツも、メルボルンスタイルで03
コーヒーマイスター、日本調理師免許を取得している平野さん。フードやスイーツもみずから手がけます

「かねてから目標にしていた独立を前に、自分のスキルがどれくらい通用するのか挑戦してみたかったんです。メルボルンのカフェは1日中お客さんがやってきますが、特に朝の出勤前、昼休み、仕事帰りの時間帯はひっきりなしなんです。

ひとりで1杯ずつ淹れていると注文に追い付かないので、ミルク担当、エスプレッソを抽出する人など、役割分担して作っていくんですが、このチームプレーがすばらしくて。1時間で約200杯作ったこともありました。約1年のわずかな期間でしたが、かけがえのない経験ができました」

そんな平野さんが営む「Chapio Coffee Brewers」では、フォームミルクとエスプレッソのフラットホワイト、お湯+エスプレッソのロングブラックなど、メルボルンスタイルのエスプレッソドリンクを軸に展開。約20種というバリエーションも魅力です。

コーヒーもフード&スイーツも、メルボルンスタイルで04
ホイップクリームとチョコレートソースをトッピングした、スイーツ感覚で楽しめるメルボルンラテ850円。バニラアイスもたっぷり

「エスプレッソ+ミルク+バニラアイスのメルボルン流のアイスコーヒーをアレンジしたメニューや、レモネードとアイスコーヒーを組み合わせたオリジナルドリンクなどもご用意しています。

現在は、自分でコーヒー豆を焙煎するようにもなりました。産地や農園で異なる豆の個性や、深煎りや浅煎りなど焙煎の加減で味わいが変わることなど、自分でやってみるとよりその違いが明確に実感できるんですよね。コーヒーの奥深さ、おもしろさを改めて感じています」

さらに、オーガニック食材にこだわったフードやスイーツも充実。パンの上にアボカド、タマゴ、ベーコンなどをのせたクラッシュアボカドをはじめ、平野さんがメルボルンで働いていたカフェのメニューや現地で食べていたものをアレンジした品々もそろいます。

コーヒーもフード&スイーツも、メルボルンスタイルで05
メルボルンのカフェでは定番のクラッシュアボカド1400円は、季節の野菜や果物も添えて彩り豊かなプレートに

メルボルンを感じながらのおいしい時間は、コーヒーや食の楽しみをさらに広げてくれそうです。

好みのテイストがきっと見つかる、自家焙煎コーヒーの店

つくば駅から車で15分ほど、つくばの周辺市街地(R8と呼ばれる8つの旧市街地)のひとつ大曽根。田園地帯や神社などどこか懐かしい風景が広がる一方で、周囲には新たに整備された地区や研究所施設が点在する、新旧のつくばを感じられるエリアです。

そんな大曽根にあるのが、もともと民家だった建物を活用した「もっくん珈琲」。営むのは、埼玉県秩父市出身の川村宜央さんと、神奈川県川崎市出身の葉月さん夫妻。おふたりとも筑波大学・大学院の卒業生・修了生です。

好みのテイストがきっと見つかる、自家焙煎コーヒーの店01
2018年にスタートした秋の恒例イベント「つくばコーヒーフェスティバル」の主宰メンバーでもある川村夫妻

「大学院修了後もつくばを離れなかったのは、ここでの暮らしがとても肌に合っていたから。ひとり暮らしをしているときも、近所に世間話ができるクリーニング屋さんのおばちゃんがいたり、行きつけの美容室があったり。あそこに行けばあの人に会えるという安心できる場所が生活圏にそろっていました。そういう日常を手放したくなくて。つくばで結婚して、3人の子どもに恵まれて、あっという間に25年が経ちました」と葉月さんは話します。

「もっくん珈琲」は、2008年に夫妻で立ち上げた移動販売のカフェからスタート。当初はハーブティがメインでしたが、徐々にコーヒーを中心としたメニューに移行。SNSを活用して情報を発信し、地域のファンを獲得していきました。2019年には、現在の大曽根に常設店舗を構え、コーヒー豆の焙煎も自分たちで手がけるように。

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1Fと2Fにカフェスペースがあり、川村夫妻とのおしゃべりを楽しみながらコーヒーを味わう人も
好みのテイストがきっと見つかる、自家焙煎コーヒーの店03
つくばが学術都市であることにちなみ、ドリップバックコーヒー1個180円のパッケージは恐竜、宇宙、植物など研究色の強いモチーフをデザイン

「日本に流通するコーヒー豆の上位5%と言われる、トップグレードのスペシャルティコーヒーのみを使用しています。コーヒーは生豆のクオリティで、9割くらいの味わいが決まると考えています。コーヒーは、ざっくり分類すると、大陸ごとに味わいの特徴があるんですよね。例えばアフリカ産はパンチが強く、中南米産はそれに比べて優しい味わい。そういった豆本来の持ち味を、どうおいしく生かして、残していくか。もちろん、気候や温度、湿度など、その時々の状況を考慮しつつ焙煎しますが、余計な手を加えずにという謙虚さを大切にしています」

好みのテイストがきっと見つかる、自家焙煎コーヒーの店04
約10種の中から、好きな豆で淹れてくれるホットコーヒー486円。アイスコーヒーやカフェラテも
好みのテイストがきっと見つかる、自家焙煎コーヒーの店05
コーヒーは料金一律で100g単位で販売。100g972円、200g1782円と、量が増えるごとに割安に

コーヒーは常時約10種類。好みに合わせて選んでもらえるよう、深煎り、中煎り、浅煎りで焙煎したさまざまな産地のスペシャルティコーヒーに加え、月替わりのブレンドコーヒーやカフェインレスのコーヒーを用意。豆の販売のほか、淹れたてを店内やテイクアウトで味わうこともできます。大学生からお年寄りまで、訪れる人々の年齢層は幅広く、近隣の研究所で働く外国人のお客さんも多いそう。お気に入りのコーヒーを見つける楽しみをぜひ。

取材・文:中村 美枝 撮影:佐野 学

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